毎月の引き落とし日が近づくと、決まって胃のあたりがキリキリする。

ポータルサイトの掲載料。中位プランで月15万円。それに予約ごとの手数料が上乗せされて、トータルでは月20万を軽く超える。年間にすれば240万円以上。都心の上位プランなら月30万、50万という話もザラに聞く。

この苦しみは、美容業界に限った話ではない。しかし美容室のオーナーに特有なのは、ポータルをやめたいのにやめたら新規がゼロになるのが怖いというジレンマだ。あるオーナーは人質を取られている感覚だと表現した。実に的確だと思う。

結論から言えば、ポータルを今日すぐやめる必要はまったくない。ただし、3年後も5年後も毎月30万円を払い続ける前提で事業計画を立てているなら、それは経営判断として誤りだ。

この記事では、ポータルへの依存度を6ヶ月かけて段階的に下げながら、自社の集客チャネルを育てていくロードマップを書いてみる。

まず、ポータルに払っている金額の本当の正体を計算する

多くのオーナーは掲載料の月額は把握しているが、トータルの集客コストをきちんと計算していない。

掲載料に加えて、予約手数料(ネット予約売上の2%程度)がかかる。さらに見落としがちなのが、ポータル経由の顧客はクーポン利用率が高いため、実質的な客単価が自社予約の顧客より低くなりがちだという点。

試しにこう計算してみてほしい。

ポータル経由の月間予約件数が100件、平均客単価が7,000円だとする。掲載料15万円+手数料(70万×2%=14,000円)で合計164,000円。100件で割ると、1件あたりの集客コストは1,640円。

これが高いか安いかは、リピート率による。もし100人のうち翌月もう一度来てくれるのが30人だとすれば、残りの70人は1,640円払って呼んだけど一度きりで消えたことになる。その70人分のコスト(約115,000円)は、そのまま排水口に流れている。

ポータル掲載料の費用構造でより詳しいシミュレーションを出していますが、この消えていく金額を直視すると、ポータルは広告であって資産ではないことが嫌というほど分かる。

翌月もその翌月も、払い続けないと集客は止まる。止まった瞬間に新規はゼロ。蛇口を閉めたら水は出ない。

自社集客は資産になる──蓄積する集客チャネルの考え方

ポータルの対極にあるのが、自社メディアからの集客だ。

自社ブログを書いて検索上位に上がれば、記事は24時間365日、無料で見込み客を連れてくる広告塔になる。書けば書くほどコンテンツが蓄積され、ドメインの評価が上がり、より多くのキーワードで上位表示される。ポータルの掲載料が消費なのに対して、ブログは投資。1年後、2年後にリターンが大きくなる構造だ。

もう一つ強力なのがLINE連携。来店したお客様とLINEで直接つながっておけば、次の来店促進はポータルを介さずにできる。休眠顧客へのそろそろいかがですかという一斉配信も、ポータルには真似できない自社だけの武器になる。脱ポータルのリアルな成功の秘訣でも書いたが、LINE友だちの数はそのまま、ポータルに頼らずにリーチできる顧客の数と同義だ。

ただ正直に言えば、自社メディアの構築には時間がかかる。ブログを書いてSEOで上位に上がるまで最低3〜6ヶ月はかかるし、LINEの友だちだって一朝一夕には増えない。

だからこそ、いきなりポータルをゼロにするのではなく、段階的に移行するロードマップが必要になる。

6ヶ月ロードマップ──ポータル依存度を段階的に下げる

以下は私が実際に提案している移行プランの骨格だ。サロンの規模や状況に応じて調整する前提だが、大枠はこの流れで進めている。

1ヶ月目と2ヶ月目。まだポータルはそのまま維持する。この段階でやるべきことは二つ。一つは自社の予約ページを立ち上げること。自社のURL、自社のブランドカラー、自社のロゴが入った予約フォームを公開する。もう一つは、来店したすべてのお客様にLINE登録を促すこと。店内のPOP、レジ横のQRコード、施術後のお声がけ。この2ヶ月でLINEの友だちを既存客の30%まで持っていくのが目標。

ここで重要なのは、自社予約ページをただ作るだけで終わらせないこと。ポータル経由で来た新規のお客様にも、次回からの予約はこちらからと自社予約のURLやQRコードをお会計時にお渡しする。紙のショップカードにQRを印刷するだけでいい。地味な作業だが、この一手間が後から大きな差になる。

3ヶ月目と4ヶ月目。自社ブログの立ち上げと、最初の5本の記事を公開する。テーマは自店のこだわりや施術の解説ではなく、ターゲット顧客の悩みに答える記事。髪がパサつく原因と対策、カラー後のアフターケア方法など、検索されるテーマを選ぶ。同時に、LINEで既存客に月2回のメッセージ配信を開始する。休眠客(最終来店から90日以上経過)へのアプローチもこの時期から始める。

この段階でポータルの掲載プランを一段下げることを検討する。最上位プランから中位プランへ。月額で5〜10万円の削減が見込める。浮いた費用は自社メディアの運営コスト(システム月額+コンテンツ制作の時間確保)に充てる。

5ヶ月目と6ヶ月目。ここで数字を見る。自社予約ページからの予約が全体の何%を占めるようになったか。LINE経由のリピーターが何人いるか。ブログ経由の予約がゼロでなくなっているか。

もしこの時点で自社チャネル経由が全体の20%を超えていれば、ポータルの掲載プランをさらに下げるか、最低プランに切り替える判断ができる。50%を超えていれば、ポータル解約も現実的な選択肢に入ってくる。

重要なのは、この判断をすべて数字で行うこと。脱ポータルした結果のリアルで紹介したように、感覚でもういけそうと判断してポータルを切った結果、新規が激減してパニックになるケースもある。だからこそ、自社チャネルの予約比率がしっかり可視化されるシステムが必要になる。

ポータルを安全に減らすための3つの安全弁

6ヶ月ロードマップを走りながら、途中で怖くなることがあると思う。実際多くのオーナーが3ヶ月目あたりでやっぱりプランを戻そうかなと揺れる。その不安を和らげるために、いくつかの安全弁を設けておくといい。

まず、予約経路の比率をリアルタイムで追えるようにしておく。ポータル経由が何%、自社サイト経由が何%、LINE経由が何%、電話が何%。この比率が見えていれば、ポータルを1段下げた月にどう変化したかが定量的に分かる。感覚ではなく数字で判断できれば、不安は大幅に減る。

次に、ポータルの契約条件を事前に確認しておく。一度プランを下げたら元に戻せるのか、最低利用期間はあるのか。いつでも戻せるなら、下げるリスクは実質ゼロに近い。

最後に、競合の動きを定点観測する。同じエリアの競合サロンがポータルの上位プランを牛耳っている場合、自社のプランを下げると一時的に表示順位が下がる可能性がある。しかしそれは、自社集客チャネルが育つまでの過渡期の話だ。自社メディアからの流入が安定すれば、ポータルの表示順位はそもそも重要度が下がる。

減らした広告費とシステム月額の差額が、そのまま利益になる

数字の話をもう少しだけ。

ポータルのプランを月30万から15万に下げれば、年間で180万円の削減。自社予約システムの月額が1万円なら年間12万円。差し引き168万円がそのまま利益になる。

もちろんブログの執筆やLINEの運用には人件費がかかる。しかしそれはオーナー自身の空き時間でできる作業だし、仮に外注しても月5万円程度。それでもポータル削減額のほうが圧倒的に大きい。

私がこの移行プランを提案するたびに感じるのは、168万円という差額を見てもすぐには動けないオーナーが少なくないということです。変えることへの恐怖は、数字の合理性を簡単に上回る。だからこそ段階的なロードマップが必要で、一歩目のハードルを極限まで下げることが肝になる。

それに、自社で蓄積した顧客データは永久に自分のものだ。ポータルを解約しても、顧客リスト、来店履歴、カルテ、VIPランキングはすべて手元に残る。ポータルのツールに依存していると、解約した瞬間にすべてのデータがアクセスできなくなるリスクがある。ポータル付属ツールからの移行術で詳しく解説していますが、このデータのロックインこそが人質を取られている構造の正体だ。

いきなりゼロにしなくていい。でも依存度を測ることは今すぐ始めてほしい

最後に一つ。この記事はポータルサイトを全否定するものではない。ポータルは新規獲得のための広告チャネルとしては今でも強力だし、開業直後の知名度ゼロの段階では頼らざるを得ないケースも多い。

ただ、広告費として垂れ流し続けるのか、段階的に自社の集客資産にシフトしていくのか。その選択をしないまま何年も過ぎてしまっている状態は、正直もったいない。

まず今月やるべきことは一つだけ。ポータル経由の予約件数と、自社チャネル(電話・LINE・自社サイト)経由の予約件数を、分けてカウントすること。それだけで現状の依存度が数字として見える。ウチはまだ95%がポータル経由だなと分かれば、それが出発地点になる。

売上分析のやり方予約システムの選び方にも目を通しながら、自分のサロンに合ったペースで移行を進めてほしい。急ぐ必要はないけれど、始めないことには何も変わりません。自分たちの力で集客できる、自立した強い店にしたいなら。

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