今月も大手ポータルサイト経由で、新しい患者さんが10人も来てくれました。 そう笑顔で、そして誇らしげに報告してくれたとある街の整体院の院長さんに、私はつい職業柄、少し意地悪な質問をしてしまったことがあります。

素晴らしい成果ですね。で、その10人のうち、前月に新規で来てくれた方は、今月何人残っていますか。

私のその一言を聞いた瞬間、院長さんはピタリと笑顔を止め、少し口ごもりながら、手元のカルテの厚い束やPCの予約表を慌てて引っ張り出してめくり始めました。 沈黙のあとに出た結論から言うと、残っていたのはたったの2人でした。残りの8人はどうなったかというと、ポータルサイトが発行した初回限定の安いクーポンだけをきっちりと使い倒し、それきり二度と院に姿を見せていませんでした。

これが、多くの整体院やマッサージサロンが陥っている、恐ろしい売上の錯覚の正体です。 大手集客ポータルサイトの豪華な管理画面を開けば、月間のアクセス数や新規予約数が右肩上がりのきれいなグラフで、とても分かりやすく表示されます。 それを見ていると、まるで自分のお店が急成長し、エリアで大人気のゴッドハンドになっているような、強烈な高揚感に包まれます。

でも、月末に銀行通帳の残高を確認したときに襲ってくる、あの背筋が凍りつくような冷や汗。 あれだけ毎日忙しくて、ベッドも回らなくなるほどフル稼働だったのに、なぜこんなにも利益が手元に残っていないんだろう。 そして、毎月自動で口座から引き落とされる数十万円の高額な掲載料を見て、ここで初めて自分たちがポータルサイトの養分として、ある種の小作農のように身を粉にして働いていたことに気づくのです。

ポータルサイトの掲載料を適正化する戦略記事でも言及していますが、この記事では、ポータル依存という麻薬のような恐怖から抜け出し、自分たちの技術でしっかりと確実な利益を出せる、自立した整体院・サロンの仕組みについてお話ししようと思います。

治ったら来ないという整体院のシステム的宿命

美容室やネイルサロンといった定期的に通うことが前提の業態と違い、整体院や接骨院にはビジネスモデル上、決定的な弱点が存在します。 それは、患者の痛い、辛いという悩みが解決、つまり治癒や改善をしてしまったら、その時点でとりあえず通わなくなるということです。

髪は切っても1ヶ月もすれば必ずまた伸びますし、ジェルネイルも数週間経てば根本が浮いて見栄えが悪くなりますから、放っておいても自然な来店サイクルが存在します。 しかし、腰の痛みが劇的に改善した患者さんは、先生、お陰様ですごく楽になりました、また痛くなったら必ず来ますね、と晴れやかな顔で言って院を後にします。

そして数ヶ月後、その患者さんがまた腰が痛くなった時。なぜかあなたの院の予約電話をダイレクトに鳴らすのではなく、スマホの検索で一番上に表示された、全く別の院の安いクーポンをクリックしてそっちへ行ってしまうのです。これが私たちが見つめなければならない冷酷な現実です。

だからこそ整体院は、美容系のサロン以上に、再来、リピートの仕組みをがっちりとシステム化しておかなければ、絶対に生き残れません。 なのに、現状の業界を見渡すとどうでしょうか。 多くの腕の良い院長さんは、施術の技術は超一流でも、予約管理やマーケティングのアナログさについては驚くほど無頓着なままです。自分の腕が良ければ、客は必ずこちらに戻ってくるはずだ、と信じている純粋な職人気質の人ほど、この錯覚の罠にはまり、集客コストに利益を容赦なく削り取られていきます。

ポータルサイトは敵ではない

脱ポータル、という威勢のいい言葉を聞くと、よし、じゃあ明日から掲載プランを一番下の安いものに落として、最終的には完全に解約して、自社専用のオウンドメディアとSEOだけで勝負するぞ、といきなり極端な行動に走る方がいます。

ですが、それは絶対にやめてください。と止めに入ります。

これまでポータルサイトにすべてを委ねてきたのに、何の武器も、強固な顧客リストも持たずにいきなり荒野に放り出されて、新規予約が本当にゼロになるという体験は、想像以上に精神をゴリゴリと削り取ります。 ポータルを勢いよく辞めたものの、患者さんがパッタリと来なくなってしまい、結局数ヶ月後により高いプランで再契約して泣きついた、という残酷な失敗談を、私は数え切れないほど聞いてきました。

大切なのは、ポータルサイトを撲滅すべき悪の敵として扱うことではありません。その圧倒的で強大すぎる集客力を、新規獲得のためのただの広告費だと冷徹に割り切り、賢く使い倒したうえで、徐々に卒業に向かうことです。

ポータルサイトの役割はただ一つ。初めての患者さんを、あなたの院のベッドに寝かせること。ただそれだけです。 そこから先の2回目、3回目の予約を、絶対にポータルのシステム上で取らせてはいけません。 なぜなら、そこで彼らのネット予約を使われるたびに無駄な従量課金手数料を数百円単位で取られ、さらに予約カレンダーを開くたびに他院の安い魅力的なクーポンの目移りにさらし続けることになるからです。

この、予約導線の切り替えこそが、ポータル依存からの段階的な離脱に向けた最も重要で、かつ最初の第一歩になります。

来店時の自社予約への強引ではない誘導

初回が終わった時点でお会計をする時。すべては、この瞬間のオペレーションにかかっています。 次回のご予約はどうされますか。こちらの公式LINEと連携している自社の予約システムから取っていただくと、いつでも空きが見れてすごく簡単ですよ、今ちょっとだけ登録してみませんか。 ここをスタッフ全員で徹底するだけで、未来の利益率は劇的に変わっていきます。

これを完全に実現するためには、大手ポータルが親切に無料で提供してくれる付属の管理ツールではなく、そこから完全に独立した自社専用の予約システムが必要不可欠になります。 個人サロンの時間泥棒から切り抜ける戦略と仕組みは同じですが、たとえばAqsh Reserveのような自社稼働のシステムであれば、月額1万円の固定費だけで、どれだけ再来のネット予約が入っても、そこから手数料を引かれることは一切ありません。

患者さんのスマホのホーム画面に、よそ見をしてしまうポータルアプリではなく、あなたの院だけの予約ページをブックマークさせ、LINEと連携させる。 この小さな仕組みの積み重ねが、強固なリピーターの壁を作り、ポータルの検索画面というライバルだらけのレッドオーシャンから患者さんを隔離する唯一の方法なのです。

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忘却を防ぐ自動リマインドと来店サイクル分析の威力

ただ自社システムに登録してもらっただけでは、まだ道半ばです。 先ほどお伝えした通り、整体院やマッサージへの来院動機は、痛くなったら、疲れがたまったら、という非常に不定期かつ曖昧なものです。

ここで威力を発揮するのが、予約システムに長期間蓄積されたデータの深い分析と、それを基にした顧客へのメッセージ送信機能です。 Aqsh Reserveを導入しているある院では、ダッシュボードの中にある来店サイクル分析の画面を、院長が毎日のように徹底的に睨みつけています。 なぜなら、初回から2回目に来る患者さんは、平均して何日後に来ているのか、というリアルなデータが感覚ではなく実数として自動で可視化されるからです。

たとえば、うちの院では平均14日以内で2回目が来ている、というデータがはっきりと分かれば、経営として次に打つべき手は明白になります。 最終来店日から12日や13日が経過したタイミングで、まだ次の予約が入っていない患者さんをシステムで抽出し、その後、お体の調子はいかがですか、そろそろ疲れが溜まってくる時期かもしれません、というフォローのリマインドメッセージを自動的に送る設定にするのです。

これをスタッフの手作業と記憶力だけでやろうとすれば、忙しい日や週末には必ずどこかで漏れが生じます。そして一度漏れると、まあいいかという空気が蔓延し、最後は誰もやらなくなります。 人間は根本的に面倒なことが嫌いな弱い生き物です。だからこそ、文句も言わずに絶対に忘れないシステムという仕組みに任せるのです。

売上ではなく、手元に残る利益を見つめる経営者へ

ポータルサイトの集客力は、まるで魔法のように見えます。しかし、それはあくまで毎月高額な家賃を支払って借りているだけの、借り物の力に過ぎません。 経営者として本当に取り組むべきは、いつまでも一見の新規客を追いかけ続けて、穴の空いたバケツに必死で水を注ぐことではなく、一度信じて下さった患者さんを決して手放さない網の目を作ることです。

その網の目となるのが、自社で完全にコントロールできる予約システムであり、そこに蓄積される本物の顧客データです。

いつか、ポータルを卒業して自分の力だけでやっていきたいと口では言いながら、毎月ウン万円の請求書にため息をついているだけでは、来年も再来年も、何も変わりません。 まずは、小さくてもいいから、自分たちのシステムだけで再来の予約が回るという成功体験を泥臭く作ることです。

自社の予約システムに、初めて既存の患者さんからのネット予約が入った時。 ポータル経由ではない、その混じり気のない1件のダイレクトな通知を見た瞬間、あなたはきっと、あ、これで自分たちだけで生きていけるシステムができたかもしれないという、震えるような確信を得るはずです。