すべてのお客様を平等に大切に。

美容室でもエステでもネイルサロンでも、接客業に携わる人なら一度は掲げたことのあるスローガンだと思います。道徳的に正しく、聞こえも良い。お客様に差をつけないプロフェッショナリズム。

正直に言います。この考え方が、サロン経営を静かに殺していく。

厳しすぎると感じるかもしれません。でも24年間、人とビジネスの接点に立ち続けてきた経験から、これだけは確信を持って断言できます。ビジネスにおける平等と公平は、まったく別のもの。

あなたのサロンの売上を支えている2割の正体

パレートの法則というものがあります。いわゆる80対20の法則で、ビジネスの世界では売上の80%は顧客の上位20%が生み出しているというかなり正確な経験則として知られています。

これはサロン業界でも例外なく当てはまります。

実際に当社が支援したある美容室の顧客データを分析したところ、上位18%の顧客が全体売上の76%を占めていました。この18%の人たちは平均月1.5回来店し、客単価は全顧客平均の2.3倍でした。残りの82%の顧客のうち、実に過半数がクーポンを利用した初回来店のみ。2回目を予約することなく消えていった層です。

この現実を知った上で、全員平等に接客しますと胸を張れるでしょうか。

上位18%のVIPに対して、クーポンで1回来ただけの客とまったく同じ接客をしているということは、あなたは年間50万円払ってくれていますが1回8,000円のクーポン客と同レベルの扱いですよ、と暗に伝えているのと同義です。

VIPはそれに気づいている。 気づいているけれど、口にはしない。ただ、あるとき予約を入れてこなくなる。

VIPが幻滅する瞬間は、驚くほど些細なことで起きる

ここで、VIP客の離脱が起きる典型的なシナリオを描写します。

3年間、毎月欠かさず通ってくれているA様。指名はいつも同じスタイリスト。カラーとカットとトリートメントのフルコースで、毎回の支払いは16,000円前後。年間の累計は約20万円。

ある土曜日、A様が電話をかけてきます。来週の土曜の14時は空いていますか、と。

しかしその枠はすでに埋まっていた。大手ポータルサイト経由で入った初回限定クーポンのお客様が3名、ちょうどその前後の枠を押さえていたのです。

申し訳ございません、あいにくその時間は塞がっておりまして、翌週ではいかがでしょうか。

A様は穏やかに電話を切ります。不満は一切言いません。 でも心の中では、3年通っているのに新規のクーポン客と同じ扱いなのか、という感情が明確に芽生えています。

翌月、A様は予約を入れてきません。 その翌月も。 そしてもう二度と、A様からの電話は鳴らない。

年間20万円の売上が、音もなく消えました。

優良顧客の見極めとえこひいきの仕組みづくりでも詳しく書きましたが、VIPの離脱はクレームではなく沈黙で始まります。沈黙は最も怖い。なぜなら、気づいたときにはもう手遅れだから。

感覚ではなくデータでVIPを特定する

えこひいきの対象を感覚で決めてはいけません。

いつも来てくれるBさんは常連だからVIPかな、Cさんはよくお話するから大切な客だ。この判断基準は危険です。よく喋るお客様が必ずしも高い客単価を持っているとは限らない。逆に、物静かに来店してトリートメントと高額な店販商品を毎回黙って購入して帰る方が、実はサロンの収益を最も支えているケースは珍しくない。

必要なのはLTV(顧客生涯価値)に基づく客観的なランク付け。感覚ではなく数字でやるものだと、私は確信しています。

直近12ヶ月間の累計利用金額を自動で集計し、上位から順位を付ける。この作業を手動でやろうとすると膨大な時間がかかりますが、顧客管理と売上管理が一体化したシステムを使えばボタン一つで上位20%のリストが出てきます。

たとえばAqsh ReserveのVIPランク機能では、直近12ヶ月の消費額に基づいて上位50名に自動でランクが付与されます。カレンダーの予約画面にはVIPバッジが表示されるので、スタッフ全員がアルバイトであっても誰がVIPなのかを一目で判断できる仕組みです。

感覚の話をしている場合ではない。数字を見るのです。

サロンの売上分析で重要な指標とやり方を参考にしながら、まず自店のパレート比率を可視化してみてください。予想よりも偏りが大きいことに驚くはずです。

正しいえこひいきは見えない特別扱いで行う

VIPを特定できたとして、ではどう えこひいきするのか。

絶対にやってはいけないのが、料金を割引することです。VIPが求めているのは安さではなく尊重。常に割引を提供すると定価を払うのが損だという意識が定着し、客単価が下がるスパイラルに入ります。これは当社が複数のサロンで実際に目撃した失敗パターンです。

正しいえこひいきは、他のお客様からは見えないところで実行するもの。

具体的にはこういうことです。VIPのA様が予約を入れた瞬間、スタッフ全員のカレンダー画面にVIPバッジが表示される。スタッフは、明日の14時はVIPのA様だと事前に把握し、A様が好むドリンク(前回の施術カルテにメモしてある)を準備し、いつも座る席を確保しておく。

A様が来店した瞬間、いつもの席に案内され、好みのドリンクが無言で出てくる。A様は、ここは私のことを分かっていると感じる。高級ホテルのコンシェルジュと同じ原理です。

この見えない特別扱いが、VIPの心に圧倒的なロイヤリティを植え付けます。そして、その特別扱いを支えているのは、スタッフ個人の記憶力ではなく、カルテとVIPランクが一元管理されたシステムです。

えこひいきの失敗パターンから学ぶ3つの教訓

えこひいきのやり方を一歩間違えると、逆にサロンの空気を最悪にして常連を怒らせてしまいます。実際にあった痛ましい失敗事例を共有します。

まず、割引でえこひいきをしてしまい定価で誰も買わなくなった店。よく来てくれるからといって特別にいつも半額にしていたサロンがありました。VIPは実はお金を払いたくないのではなく、人として大切にされたいのです。割引を常態化させると定価で払うのが馬鹿らしいという認識が生まれ、結果的にサロンの客単価が右肩下がりになります。

次に、スタッフの主観だけでVIPを決めた結果、ヒエラルキーが生まれたケース。データを使わず、オーナーが私とよくゴルフに行くあの人は当然VIPね、と感覚と権力で決めてしまった美容室の例です。他のスタッフたちは白け切り、本当は高額メニューを毎回利用してくれている静かなC様は他店へと流出しました。客観的な数字を基準にしないえこひいきは、単なる公私混同です。

最後に、周りのお客様に見える形で露骨な優遇をしてクレームの嵐になったケース。VIPにハイブランドのプレゼントを大声で渡してしまい、それを見た他のお客様がネット上にあからさまな差別を見せられた気分だと口コミを書いた事例があります。えこひいきは、他のお客様に絶対に気づかれないように静かに裏側で行う美学が必要です。

新規客を粗末にするという話ではない

ここで誤解のないよう明確に伝えておきます。

VIPをえこひいきすることは、新規客を雑に扱うことではありません。新規のお客様にも丁寧な接客をするのは当然です。ただ、限られたリソース(時間、席、スタッフの気力)の配分において、年間20万円を払ってくれるVIPとクーポンで1回来ただけの客に同じ量のリソースを割くのは経営として非合理的だ、という話です。

分かりやすい例でいうと、飛行機にはエコノミーとビジネスクラスがあります。エコノミーの乗客がぞんざいに扱われているわけではない。でもビジネスクラスの乗客にはより上質なサービスが提供される。それに対して不平等だと怒る人はほとんどいません。対価に応じたサービスの差があるのは自然なことだと、みんな理解している。

サロンでも同じロジックが成り立ちます。 ただし飛行機と違って差をあからさまに見せてはいけません。他のお客様に特定の誰かだけ特別扱いされていると感じさせた瞬間、信頼は崩壊する。だからこそ、システムの画面上でだけVIPかどうかが分かり表に出ない仕組みが必要なのです。

予約管理システムの選び方で失敗しない7つの基準でも解説していますが、VIP管理の有無はシステム選定における重要な判断基準の一つです。

売上だけではない、紹介というもう一つのVIP指標

VIPの価値は直接的な売上(LTV)だけでは測れないケースがあります。

たとえば、月に1回の来店で客単価は平均的だけれど、過去1年間で5名の新規客を紹介してくれている方。この方の直接的なLTVは平凡でも、紹介された5名の売上を合算すると、サロン全体への貢献度は上位10%に入ることがあります。

私がコンサルの現場で見た印象的な事例があります。あるネイルサロンで、LTVランキング上位15名とは別に、紹介件数でランキングを作ったところ、LTVでは中位に位置していたお客様が紹介件数トップ3に入っていました。このお客様は、地元のコミュニティで影響力のある方で、クチコミでの集客に多大な貢献をしていた。にもかかわらず、LTVだけで判断していたために特別扱いの対象から外れていたのです。

売上のVIPと、紹介のVIP。この二つの軸を持つことで、えこひいきの対象選定が一段と精緻になります。顧客管理システムに紹介元の情報を紐付けられるかどうかは、意外と見落とされがちなポイントですが非常に重要です。

えこひいきのROIは驚くほど高い

えこひいきに投資する手間やコストに対して、どれだけのリターンがあるのか。ここも感覚ではなく数字で見たいところです。

VIPの年間離脱率が仮に10%だとします。VIP50名のうち年間で5名が離脱する計算です。VIP1人あたりの年間LTVが20万円とすると、5名分で100万円の損失。

一方、VIPへのえこひいき施策(バッジ管理、好みのドリンクの用意、パーソナライズされたLINEメッセージ)にかかるコストは、システム利用料の月1万円と、スタッフがVIP用の準備に使う1日10分程度の時間。年間のコストはシステム分で12万円、人件費換算で数万円程度です。

この投資で離脱率が10%から5%に半減すれば、守れた売上は50万円。投資対効果は3倍以上になります。しかもえこひいきの効果はVIPの満足度向上だけに留まらず、口コミや紹介を通じた新規獲得にも波及する。

失客を防ぐための顧客管理とフォロー施策でも触れていますが、新規を1人獲得するコストは既存客を維持するコストの5〜7倍かかるという定説があります。守る投資の方が、攻める投資よりも圧倒的に効率が良い。

VIP育成の第一歩は上位20%リストを今すぐ出すこと

理屈は分かった。でも何から始めればいいか分からない。

最初のアクションは非常にシンプルです。 直近12ヶ月の来店回数と累計金額のデータを引っ張り、上位20%の顧客リストを作ること。これだけです。

紙のカルテや手書きの台帳だとこの作業に丸一日かかりますが、顧客管理が組み込まれた予約システムなら数クリックで終わります。

どんぶり勘定を卒業するサロン売上分析のやり方を参考にしながら、まず、この20人が自分のサロンを支えてくれているという事実を数字で確認してみてください。

その20人の名前を見た瞬間、この人たちにもっと良い体験を提供しなければ、と自然に思えるはずです。その感情こそが、正しいえこひいきの出発点です。

月額5,000円から、初期費用ゼロでVIPランクの自動算出と顧客分析が使えます。合わなければいつでも解約可能です。まず自分のサロンのパレート比率を数字で見てみてください。

平等は美しい。でも、経営は厳しい。 大切な人を大切にする仕組みを、今日から作りませんか。

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