最近来ないな、と思うお客さんがいる。

名前も顔もはっきり覚えている。いつもカラーとカットのセットで、仕上がりに満足して帰っていった。次回も来てくれるものだと思っていたのに、気づいたら3ヶ月が経っていた。

連絡を取ろうかと迷う。でも、何て送ればいいのか分からない。そもそも、こちらから連絡して嫌がられたらどうしよう。もし他の店に移ったのだとしたら、追いかけるのは格好悪い。それに、たった1通のLINEが営業臭くなって、逆にブロックされるかもしれない。

この板挟みでフリーズしてしまうオーナーは、たぶん全体の8割くらいいると思う。私自身もずっとそうだった。で、結局何もしないまま半年が過ぎて、あのお客さんは二度と来なくなる。

ただ、数字を見て気づいたことがある。声をかけなかったことで失った売上のほうが、声をかけて嫌われるリスクよりも、はるかに大きいということだ。

来なくなった理由の7割は、なんとなく

サロンの失客について調べると、驚くほどシンプルなデータに行き当たる。

不満があって失客する割合は、実は全体のごく一部に過ぎない。失客の約7割は引越しや担当者の退職、そして何よりなんとなく行かなくなったという理由で占められている。技術が嫌いになったわけでも、接客に怒っているわけでもない。ただ、なんとなく予約を先延ばしにしているうちに、行きづらくなってしまっただけなのだ。

でも、分かっていても送れない。休眠客へのメッセージ送信ボタンを押す直前、指が止まる。 営業だと思われて、鬱陶しいってブロックされたらどうしよう……と。 怖い。普通に、怖いんですよ。過去に一度でもブロックされた経験があると、もうトラウマみたいになってしまう。だからそのうち思い出して来てくれるだろうと自分に言い訳をして、何もしない。過去の私も完全にそうだった。

ただ、数字を見て気づいたことがある。声をかけなかったことで失った売上のほうが、声をかけて一時的に嫌われるリスクよりも、はるかに大きいということだ。サロンの売上分析をしてみれば分かるが、一度でも来店してくれた人は、まだあなたのお店のことを完全には忘れていない。

コホート分析で感覚経営から抜ける方法でも触れたが、初来店月ごとのグループが何ヶ月後にどれくらいリピートしているかを可視化すると、失客のタイミングがはっきり見えてくる。そして、もう一つ重要なデータがある。来店サイクルだ。

来店サイクルが今連絡すべき人を教えてくれる

あるお客さんが平均45日ごとに来店していたとする。

45日でカットに来て、次は42日で来て、その次は50日だった。このアプローチにおける最大の鉄則。それは絶対に売り込まないことだ。

過去の私も含め、焦っているサロンオーナーがやりがちなのが、今月限定!全メニュー20%OFF!といったゴリゴリの営業メッセージを一斉送信してしまうこと。これは最悪の手だ。数ヶ月音沙汰のなかった相手から突然割引クーポンが送られてくる。お客さんからすれば、まるで何年も連絡を取っていなかった同級生から突然久しぶり!すっごくいい話があるんだけどお茶しない?と連絡が来た時のような、あの独特の不気味さと警戒心を抱かせてしまう。ブロックされて終わりだ。そういうのは、絶対にやめてほしい。

アプローチは、徹底して気遣いのパッケージで包む。予測日を過ぎても来なかった場合、その時点で初めてアプローチする。これなら営業ではなく気にかけているになる。お客さん側から見ると、ちょうど行かなきゃと思っていたタイミングで連絡が来た、という印象になる。

逆に、来店サイクルが回っていない段階──たとえば前回から20日しか経っていないのに連絡を入れたら、それは余計なお世話だ。間隔を無視した一斉送信がスパムだと感じられるのは、まさにこのタイミングのズレが原因なのだ。

業界の通説では、来店サイクルが3回分以上空くと、戻ってくる確率は5%未満に急落するとされている。45日サイクルのお客さんなら、135日──約4ヶ月半。ここを超える前に手を打たないと、ほぼ取り返しがつかない。

ここで厄介なのは、来店サイクルがお客さんによって全然違うという事実だ。毎月来る人もいれば、3ヶ月に1回の人もいる。全員に同じ60日経過で声かけというルールを当てはめると、3ヶ月サイクルの人には早すぎるし、毎月来る人には遅すぎる。つまり、パーソナライズが必要になる。

手動でこれを管理するのは不可能に近い。100人の顧客それぞれの過去の来店日を確認して、平均サイクルを計算して、次回来店予測日を出す──Excelでやるにしても、毎週の更新が現実的ではない。だからこそ、予約データから自動的に来店サイクルを算出してくれるシステムに任せるべきなのだ。オーナーがやることは、システムのダッシュボードを週に1回開いて、今週アプローチすべき休眠客の一覧を見ることだけ。名前が出てくれば、あとはメッセージを送るだけだ。

失客を防ぐリピート戦略の記事で私は、新規顧客のリピート率は平均30%前後、既存顧客の安定リピート率は70%前後だと書いた。休眠客を呼び戻すことは、30%のグループを70%のグループに引き上げる作業ともいえる。しかもその人たちは一度あなたの施術を気に入っている。ゼロから信頼を築く必要がない分、新規集客より効率がいい。

一斉送信は嫌われ、セグメント配信は歓迎される

では具体的にどう連絡するのか。

最悪なのは、全顧客に同じメッセージを送ることだ。来店したばかりの人にも、3ヶ月来ていない人にも、年に1回の人にも、同じ新作デザインの案内を流す。これは気遣いとは程遠い。お客さんの側から見ると、自分のことを何も分かっていないのにメッセージだけは送ってくる──ブロック一直線のパターンだ。

セグメント配信とは、顧客をグループに分けて、それぞれに合った内容とタイミングでメッセージを送る方法だ。一斉送信と比べて反応率は4〜5倍になるという調査結果もある。

たとえば、こういう使い分けをする。

来店から60日以上が経過し、来店サイクルを超過している顧客にだけ、前回の施術内容に触れた声かけを送る。VIPランクの上位顧客には、新メニューの先行体験を個別に案内する。メッセージ受信を拒否している顧客には絶対に送らない。

ここで大切なのは、メッセージの温度だ。前回のカラー、とても似合っていましたよね。今月から秋の新色が入ったので、よかったら見に来てください──という書き方なら、営業ではなく声かけになる。前回の施術記録が残っていなければ、この一文は書けない。顧客管理とカルテの重要性は、ここで効いてくる。

メッセージにはもう一つ、今連絡する理由を入れるのが鉄則だ。唐突に送ると、なぜ今?という違和感が生まれる。誕生月だから、季節の変わり目だから、新メニューが出たから──何でもいい。理由があるだけで、受け取る側の印象はまるで違う。理由のないDMは売り込み、理由のあるDMは気遣いになる。この差は微妙に見えて、ブロック率に直結する。

休眠期間の長さによってアプローチの手段を変えるのも実践的なテクニックだ。60日以内ならLINEの1通で十分。90日を超えていたら、手書きのコメントを添えたハガキを併用する。デジタルが主流の今だからこそ、紙の手紙は異常なほど目立つ。アナログとデジタルの使い分けができるのは、顧客データがきちんと蓄積されている店だけだ。

もっと突っ込んだ話をすると、休眠客への声かけは1回で終わりにしないほうがいい。業界の成功事例を見ると、3段階のステップで設計しているケースが多い。まず軽い挨拶。反応がなければ2週間後に特典付きの案内。それでも反応がなければ、1ヶ月後に最後のご案内として期間を区切ったオファーを送る。1回目で戻らなかった人が、3回目で戻ってくることは珍しくない。ただし、3回送って反応がなければ、それ以上は送らない。しつこさは信頼を壊す。

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戻ってきた休眠客が教えてくれること

セグメント配信で戻ってきたお客さんには、ひとつ面白い傾向がある。

離れていた間に他店を試して、それでも戻ってきた人は、自分のサロンの何が良かったかを言語化できていることが多い。あちらの店は安かったけど雑だった、こっちの店は丁寧だった、やっぱりここの仕上がりが好き──そういう声を、わざわざ伝えてくれるのだ。

この声こそ、広告では絶対に手に入らない一次情報だと思っている。アンケートを取っても出てこない、比較体験を経た上での正直な評価。自分の店の本当の強みが分かる。

あるサロンでは、休眠客へのセグメント配信を始めてから、月間の復帰者が平均3名から8名に増えた。客単価7,500円として、月に37,500円、年間で約45万円の売上増になる。新規集客に45万円使う必要がなくなった、と読み替えてもいい。

サロンの売上分析を日常的にやっているオーナーなら分かると思うが、この45万円は広告費ゼロで生まれた売上だ。LINEの送信コストは月に数通分。費用対効果でいえば、サロンのマーケティング施策のなかで最も効率がいい部類に入る。

もう少し長い目で見ると、数字のインパクトはもっと大きくなる。復帰した休眠客がその後1年間リピートしてくれた場合のLTV(生涯価値)は、客単価7,500円×年12回として約90,000円になる。5人の休眠客を復帰させるだけで、年間45万円のLTVが発生する計算だ。新規集客で同じLTVを作ろうとすれば、広告費だけでなく、初回来店から定着するまでの離脱率も勘定に入れなければならない。新規客のリピート率が30%なら、10人集客して3人しか残らない。その10人を集めるコストが5万円なら、LTV対広告費の効率は休眠客掘り起こしの足元にも及ばない。

実は、休眠客が戻ってきた後のフォローにも仕組みが必要だ。せっかく復帰してくれたのに、そこから先はまた放置──では同じことの繰り返しになる。復帰後の初回来店が終わったタイミングで、次回予約のリマインドを少し早めに送る。復帰直後は特に離脱しやすいので、通常よりも短い間隔で接点を作るのが定石だ。ここまで設計できれば、休眠→復帰→定着のサイクルが仕組みとして回り始める。

気にかけていますという仕組みを作る

休眠客への声かけが苦手なオーナーこそ、仕組みに任せたほうがいい。

来店サイクルの超過を自動で検知し、条件に合う顧客にだけ、施術履歴に基づいたメッセージを自動送信する。オーナーがこのお客さん最近来ないなと気づく前に、システムが先にアプローチしてくれる。

気まずさも、営業っぽさも、タイミングのズレも、すべてデータが解決してくれる。

月額固定で初期費用ゼロ。いつでも解約可能な予約管理・分析システムなら、まずは自店の来店サイクルを可視化するところから始められる。数字を見ただけで、今すぐ連絡すべきお客さんが何人いるか分かるはずだ。

声をかけるのが怖い、という気持ちはよく分かる。でも、声をかけなかったことで静かに消えていく売上のほうが、ずっと怖い。

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